覇権主義と派遣主義
イラク戦争に大義がないと感じる人が五割を超えた。フランスやドイツの話ではなく、ほかならぬ米国の世論調査だ。泥沼のイラク情勢に冷静な米国人はベトナムの悪夢を重ねる。唯一の超大国になった米国は、なぜか自信なさげにさらなる「覇権」を求めて疾走する。身体をつなぎとめるゴムの収縮力が弱まったバンジージャン…
View Articleイラクのパレスチナ化と日本のたどる道
自衛隊派遣への感情的反対論に対する反論は難しい。しかし、冷静に将来を見通す必要があることは間違いない。 テロの衝撃は様々な反応を呼び起こす。世界貿易センタービル、国防総省などに対する攻撃に米国は怒った。アル・カエダの拠点アフガニスタンを攻撃し、タリバン政権は崩壊した。イラク戦争もその延長線上にあり…
View Article「小泉ドクトリン」という日本的死角
イラク戦争・復興に当たっての対米外交に、どのような戦略計算があるのか。小泉首相による自衛隊派遣の説明からは、そうした論理と利害が伝わらない。「名誉」を正面に据える「小泉ドクトリン」がはらむ外政面のリスクとは―― 自衛隊のイラク派遣は、その出し方だけでなく引き方も含めて、今後長期にわたる日本の行く手…
View Article自衛隊派遣、進まぬ三大改革「重圧」の中で迎えた首相の新年
この一年の永田町の変化を象徴するのは目立って増えた警察官の姿だろう。昨年三月のイラク戦争開戦以来、警察庁は過去最大規模の態勢で全国約六百五十カ所の重要施設警備を継続している。その最重要ポイントが首相官邸や国会、自民党本部などが密集するこの界隈だ。道路を遮断できる伸縮式の防護棚が何重にも設置され、…
View Article「イラク国会」を矮小化させた政府の凡ミス野党の勇み足
第百五十九回通常国会が一月十九日に召集されてから一カ月。国会では連日、イラクへの自衛隊派遣の是非をめぐり激論が戦わされた。 自衛隊の海外派遣に国会がこれほど関心を払ったのは、戦後初めて自衛隊の本隊が海を渡った一九九二年のカンボジアPKO派遣以来と言っていい。今度こそ隊員に初の犠牲者が出るかもしれ…
View Article首相を悩ます派遣自衛隊員の“遺書”
自衛隊のイラクでの復興支援活動が本格化しつつある中、ある問題が浮上している。 首相周辺によると、派遣隊員がテロ攻撃などで殉職した場合、「内閣支持率が一気に低下しかねず、官邸としては七月の参院選前にそれだけは避けたい」。そのため、万一の場合には小泉純一郎首相が即座にイラクに飛び、遺体を引き取るシナ…
View Articleイラクから「撤退せず」悩まざる小泉 あとでこじれた民主党
日本中を揺るがすことになるイラクでの日本人人質事件の第一報がカタールのテレビ局「アルジャジーラ」から外務省にもたらされたのは、年金制度改革法案をめぐる与野党攻防で紛糾していた国会が六日ぶりに正常化し、小泉内閣が一息ついた四月八日の夕刻だった。 アンマンから陸路バグダッドに向かっていた日本人の民間…
View Article【インタビュー】ジェームズ・アワー(米バンダービルト大学教授 日米研究協力センター所長) ふたつの脅威に直面する日本には日米同盟が“死活的に”重要だ
世界的規模で米軍再編が進められるなか、アメリカは日本にどのような役割を担わせようとしているのか。そして、憲法改正を促すかのような米政府高官の発言の真意とは何か。 海軍少尉として長崎・佐世保に赴任して以来、四十余年。ジェームズ・アワー教授は海軍兵士、あるいは米国防総省日本部長として日米同盟を現場で支…
View Article自衛隊「国際待機部隊」陣容はこうなる
十二月に閣議決定される新しい「防衛計画の大綱」を受けて、自衛隊に新設される「国際待機部隊」の陣容が見えてきた。「日本の独自判断による海外派遣」の主役、陸上自衛隊は司令部組織として「中央即応集団」を埼玉県の朝霞駐屯地に新設。パラシュート部隊の第一空挺団、大型輸送ヘリからなる第一ヘリコプター団、発足…
View Article戦場に行く人 行かずに論じる人
単に「香田さん」では、もう通じない方があるはずだ。イラクに行って人質になり、ビデオで「もういっぺん日本に戻りたいです」と言ったのを最後に殺され、遺体を路傍に捨てられた香田証生さん。そう言えばようやく「ああ、あの人」と思い出してもらえるだろう。 Tシャツに短パン、無防備・無警戒で戦場に入っていった…
View Article「北の脅威」にようやく備え 自衛隊の新装備
敵基地への攻撃が自衛隊にとって現実的な選択肢になる。過去の政府の国会答弁で、他に手段のない場合に限って敵基地攻撃を自衛の範囲に含めることが認められているものの、自衛隊の装備体系は防御兵器に限られている。そのため、実際には「切れない切り札」(防衛庁幹部)だった。 だが、十二月十日に閣議決定された五…
View Articleインドネシア・アチェで自衛隊を待ち受けるもの
大地震と津波による未曾有の災害に襲われたインドネシア政府からの要請を受けて、防衛庁・自衛隊は国際緊急援助隊派遣法に基づき、過去最大規模となる陸海空自衛官約八百人の大部隊を、被害が最も深刻なスマトラ北部アチェ特別州に派遣する。先遣隊に続いて一月六日に航空自衛隊の輸送機が日本を出発、続いて中旬には海…
View Articleいくら何でも「スーダンPKO」は無理
政府が自衛隊派遣の検討を始めたスーダンでの国連平和維持活動(PKO)に対し、防衛庁から「派遣は困難」との声が出ている。昨年暮れに改定された「防衛計画の大綱」は自衛隊の海外派遣を本来任務に位置づけたが、現実は厳しいようだ。 内戦が続いた北東アフリカのスーダンでは、一月、バシル政権と反政府勢力が包括…
View Article豪・東ティモール対立で動きのとれない日本
オーストラリアは二月下旬、東ティモールとの領海線の画定に関する交渉を延期する方針を決めた。両国間には「ティモール・ギャップ」と呼ばれる豊富な海底ガス・油田があり、取り分をめぐり対立が続く。 オーストラリアが実質的に支配しているガス田の開発を石油開発会社に許可しようとする一方、東ティモールは開発に…
View Article海外派遣の自衛隊を振り回す「偽情報」
スマトラ沖地震・津波の被災者支援のためインドネシアのアチェ州に派遣された自衛隊。インドネシア軍とアチェ独立組織が交戦との情報に基づいて輸送支援を一時中断したが、この情報が誤りだった可能性が強まっている。 二月二十一日、現地の海上・陸上自衛隊にインドネシア軍から、軍とアチェの独立武装組織「自由アチ…
View Article「ガス田上空」に中国軍機 自衛隊機スクランブル急増
中国が海底資源の開発を進めている東シナ海の日中中間線付近。その上空で中国空軍が情報収集機による活動を活発化させており、航空自衛隊の戦闘機が九州の新田原基地、築城基地から緊急発進するケースが相次いでいる。 防衛庁によると、二〇〇五年四月から九月までの半年間に、日本の防空識別圏(ADIZ)に中国軍機…
View Articleロシアが中国に引き渡した最新鋭潜水艦の脅威
装備の近代化と強化を急ピッチで進める中国海軍が昨年十二月、ロシアから新たにキロ級潜水艦とソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦、それぞれ一隻の引き渡しを受けていたことが明らかになった。 このうち、今回引き渡されたキロ級潜水艦は、従来の877型よりもスクリュー音の静粛性が格段に高まって探知・追尾が難しいと…
View Article国際災害援助でCIMICが力を発揮し始めた
昨年のパキスタン大地震では自衛隊と日本のNGOの連携が結実。海外ではすでに進歩している民軍協力の日本での将来性は――。 大災害や紛争地の復興活動で、国際機関などの文民組織と軍隊が協力する「民軍協力(Civil Military Cooperation=CIMIC)」が世界的に盛んになってきている。…
View Article大きな問題、小さな問題
アネクドートの世界で筆者の恩師だった作家・ロシア語通訳の米原万里さんが亡くなられた。米原さんと会う時はいつも緊張した。鋭い感性、辛辣な直言、頭の回転の速さと記憶力で圧倒される上、おかしなことを話すと後で何を書かれるか分からないからだ。 米原さんが話していたロシア式アネクドートの真髄は、「視点を一…
View ArticleNATOとの協力は必要だが油断禁物
安倍首相はNATO本部で協力を謳った。だが自衛隊の海外任務で犠牲者が出れば世論は急変しかねない。覚悟と準備あってのことなのか。 遥けくも来にし道かな。 訪欧中の安倍晋三首相が一月十二日、北大西洋理事会(NAC、いわゆるNATO=北大西洋条約機構=理事会)に日本の指導者として初登場、初演説したとき、…
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